世界のユースセンターを巡る旅人

世界を旅する日本人とフランス人の話。

【フランス】若者の就職事情・国を去る若者が増えている実態とは

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日本とフランスで暮らした私たちが感じる両国の差の中で、特に大きく異なるのがこの就職事情。フランスの若者は、日本とは大きく異なる就職期を過ごしています。

今回は若者である私たちが、若者目線でフランスの就職事情についてまとめました。

 

 

転職は当たり前?

卒業後3年間1つの企業にとどまっていたのは8%に過ぎず、9割以上が少なくとも1回以上転職している。3回以上の転職も29%と3割近くに達している。*1

この記事の数字を見て分かるように、今の若者のほとんどは卒業後に就職したとしても、辞めて違う企業に転職します。

私たちの身の回りにも、そのような人が沢山います。仕事をしたい・家族を持ちたい人でも、大学卒業後すぐではなくて、だいたい30代前後で職を定める人が多いのが印象的です。

ヨーロッパでは、全体的にこのような傾向の国が多いようです。

高校・大学修了後の自分の好きな仕事が見つかるまでに、仕事やインターン、バイトを探してやってみます。それらは仮?というのもなんですが、「取りあえずやってみて、だめだったら違う場所探そう!」みたいな人が少なくないのです。そしてできる限り、自分のしたいことに近い仕事を探し続けます。仕事は自分の好きなこと・学んだことの延長で選ぶのが、フランスでは普通なのです。

私たちの身近な例

➀27歳男性

パリ在住。大学卒業後、営業職に就職。忙しさと仕事が自分には合わなそうなので、27歳で一旦職を辞め、これからは少し自分の好きな生活をする時間をつくることにする。少し休んだり世界を旅してから、次の仕事を探すそう。

②28歳女性

パリ近郊在住。子供がいる学生。バーテンダーの資格を取りディズニーランドのバーで働くも、他に違うことが見つかり退職。看護師になることを志し、看護の専門学校に入学。現在は資格取得のために勉強中。

このような若者がフランスにはたくさんいます。田舎の若者は学校や職を求めて、パリなどの都会に行く人がほとんどです。そこで就職しお金を貯めた後、田舎に戻ることも少なくありません。

このようにして若者が自分の好みの仕事を求め、転職をしながらうろうろするのはごく一般的なのです。

 

新卒は別に優遇されない

フランスでは新卒だからといって優遇されることはありません。一番チェックされるのは、資格です。どこで働くにも「この会社で働くための資格を保持しているのか?」が最も問われます。即戦力が必要だからです。

職の少ないフランスで、必然的に経験や資格の少ない若者には、就職活動がとても厳しいものになります。それは若者の失業率の高さに表れています。

フランスの労働者人口における失業率は2019年現在、8.5%*2。それに比べて若者の失業率は、22.3%*3です。若者の失業率は倍以上の数字が出ています。

資格のない若者にとって就職は本当に厳しいものです。しかし資格を持っていれば、それなりの専門職を探すことができます。フランスの若者の就職活動は、学歴主義です。学んだことと全く関係ない職業に就けるような日本社会とは異なります。フランスでは学んだことが資格となり、そのまま仕事になっていくのです。

また、大学に行き資格を取り終えたとしても、就職への道が狭ければ職を見つけることは容易ではありません。そのためあらたな資格取得を目指したり、インターンをしている若者がたくさんいます。

 

フランス人の大学入学平均年齢は24歳*4

1つの資格だけでは、自分の求める就職ができないがために、フランスでは資格を求めて、2度目、3度目と大学に入る人がいます。大学入試のテストがない国ならでわでもあります。

フランスの大学の学費は200€。生活や住む場所に対する学生サポートも、日本に比べてかなり整っています。つまり、フランスの学生はかなりお金がかからないため、いつでも学生になりやすいのです。

1回就職した後の大学入学や転校、転科をする人が少なくありません。皆、自分が好きな勉強を常に追い続けています。大学入学平均年齢が24歳という数字の背景には、このような事情があります。

また大学以外にも若者のための就労支援施設もあり、仕事やインターンで資格が得られる場所を紹介してくれます。大学に入らなくてもインターンを通して仕事と学業をし、将来に備えることができます。インターンといっても数ヶ月に及ぶもので、ほぼ社員のように働き、経験を得ることができます。

このようなことをして、若者は資格と経験を蓄えながら自分に見合った就職先を探していきます。

 

フランスを出る決意をする若者が増えている

約30%の若者が3回以上転職をするフランスの若者事情の背景は、今まで見てきたとおりです。しかし最近は好きな仕事が見つかるまでの間に、若者は他国を視野に入れ始めています。

2006~13年に国外へ移住するフランス人の数は14万人から20万人に増え、そのうち80%が18~29歳の若者*5

私たち自身の感覚ですが、今の若者は親世代に比べてかなり海外に魅力を持っています。

特にフランス国内が税金問題や、年金問題移民問題で安定しない状況にあり、働ける場所も見つからないという自分自身の将来が約束されないフランスに焦りを感じ、いろんな若者が他国に強くあこがれを抱いています。その対象は、他のヨーロッパ諸国だけではなくカナダや日本にまでにも及んでいます。

 

若者はうろうろするもの

人生も職業についてもそうなのですが、若者はうろうろするものだという理解があります。学業を経て、好きな仕事を探す。その好きな仕事を見つけるまでの期間が、うろうろする期間です。

この期間に資格・経験を蓄え、それらを使って働ける場所を探します。そして自分に合うところを探す過程で、何回も転職をします。

30代前後で職を定めようというよりも、30歳前後で職を定めることがやっとできるというのが答えのようです。そのうろうろの期間にフランスにあきらめを感じた・国外に魅力を感じた若者は、先ほど述べたように国外に出て行くというのが今の若者の流れのように感じます。

ただ、このうろうろの時期が容認されること・うろうろせざるおえないことは、若者が自分自信の人生を探る時間になっています。急ぐのではなくて、ゆっくりじっくりと好きな仕事を探していきます。この時期があるからこそ、その後の人生をより豊かにすることができるのかもしれません。