たまにいるんですよ。「風邪をひいたらこのお酒!」ってススメてくる人が。。年配の方を中心に、よく体調不良になるとお酒を飲むことを子供の頃に習ったという話をよく聞きます。今回は、お酒と子供の関係を過去から見てみました。
お酒は万能
フランスでは長い間、アルコールは健康によく、体を強くさせると信じていました。これは、1860年代にルイ・パスツールが「ワインは飲み物の中で最も健康的で、最も衛生的なものです」と言ったことに起因します。そしてみんなが彼の言葉を聞き、長い間信じていました。
そのため子供たちには、毎日食事の時にワインが与えられていました。フランス人は、水よりも健康的だと考えていたのです。それからも、アルコールは健康に良いという信念がどんどん広がっていきます。虫を殺す、消毒薬として使える、体を温める、妊娠中にビールを飲むと母乳が出やすくなる、などなどいろんなことが出てきました。
学校でもワイン
以上のような状況から、1950年代まではすべての子供たちが家庭や学校で毎日アルコールを飲んでいました。学校の食堂で、子供たちは水で薄めたワインを飲んでいました。
しかしその頃、科学者たちが「アルコールは子供には良くない」と言い始め、14歳以下の子供は学校での飲酒が禁止され、その年齢以上の子供は、親の同意によってアルコール度数が3度までのお酒を飲むことができるように変更されました。
しかし、ほとんどの親はワインは健康に良く、成長に必要なものだと考えているため、学校では飲めないことから、登校前、子供にワインを飲ませることにしました。そのため、子供たちはしばしば酔っ払って学校に来てしまい、学校に通うことに対しての問題が生まれてきました。
お酒を禁止していく
その状況を見て1956年、ピエール・メンデスは、フランスの学校でワインをコップ一杯の牛乳と角砂糖に置き換えることを決めました。そこには牛乳が子供たちを強くし、勉強熱心にさせるという理由を添えたのです。なぜならその頃、子供たちの間で栄養不足とアルコール依存症が問題にあがっていたからです。
1968年には、ある博士が妊娠している女性のアルコール依存症の危険性を示す研究を発表したとき、フランス人は彼のことを馬鹿にし、誰も信じなかったそうです。その後アメリカの研究者チームが、1973年にその問題を真剣に取りあげたことで、妊婦のアルコール摂取の危険性が一般的になっていきました。
そのように少しずつ、フランスは変わっていきました。2016年に発表されたFranceAgrimerの調査によると、1980年に15歳から19歳の若者の60%がワインをよく飲んでいたのに対し、2016年には約30%がワインを常用しているように減少していることがわかります。*1ちなみに、フランスで14歳以上の飲酒が禁止されたのは1981年のことで、若者の禁酒については約40年の歴史があります。
禁酒が定められる前の人たち
つまり、40年以上生きている人のなかには、子供の頃、普通に若者がお酒を飲める環境がありました。私たちがよくお酒を進められるのも、そんな歴史が関係するようです。
徐々にお酒についての認識は変わってきてはいますが、いまだにお酒を飲むことが健康にとても良いと信じている人が多くいるのを実感します。世代によって、知識のアップデートができないまま、子供たちにもそれを伝えてしまっているのです。そこには少し問題があるように感じる次第です。
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